pazuのノスタルジックな道具

愛着の道具と遊びの回顧録

騎馬民族国家 江上波夫著

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劉邦が漢を興して中国を統一後も北方ユーラシアステップにはTurk語系騎馬民族匈奴が威を持って君臨していました。北狄ですね。漢は劉家の女子を単于(ゼンウ親分、酋長だね)に与える降嫁策をとって懐柔します。しかしついに武帝が登場します。河西回廊の先へ軍を差し向け匈奴制圧に乗り出します。西方(ウズベキスタンあたりかな)に産する汗血馬を欲しかったのも一因だともいいますがそれくらい漢の馬は匈奴の馬に比べて貧弱。中島敦の李陵やら司馬遷やらが登場する時代です。匈奴は敗れ西へ逃れ月氏を圧迫します。月氏は南の天竺へ攻め入りクシャーナ朝を興す...オートマチックですね。Turk語系は西へ広がり東洋の入口アナトリアまで行っちゃう。後にフン族の王アッティラなんてのが現れて東ゴート族を圧迫しゲルマン民族の大移動となって結果ローマ帝国は滅ぶわけです。武帝がトリガーを引いたとも言えなくもないような。
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昭和42年発行の江上波夫著の騎馬民族国家を新書コーナーで手にしたのは30数年前ですが内容は騎馬民族日本征服論、天皇家のルーツに関わることなので発表当時は大論争になったようです。読後ボクのアタマの中はキバミンゾク一色のワクワクモードで関連書物読み漁る日が続きます。ユーラシアステップを舞台に太古から繰り返される勃興と衰退。なんと言っても馬を道なき道を疾駆可能な自在な乗り物に変えたハミ(銜、轡クツワ)の発明がすごいと思いますね。スキタイあたりなのか同時発生的に現れたものか興味のあるところです。いずれにしてもジンギスカンが表れてユーラシアステップの西の果てまで制圧するずっとずっと以前のことです。忘れられない一冊です。