pazuのノスタルジックな道具

愛着の道具と遊びの回顧録

FUJI 引伸ばし機 S69

f:id:Qjiro:20200321121656p:plain
大昔の富士写真フィルム製のモノクローム引伸ばし機です。これは父の愛用品でボクが小学生の高学年の頃にはすでにありました。父も最初はキャビネ版か六切の現像で満足していましたがやがて四切になって技術的に自信をつけると徐々にエスカレートしていきます。ボクが中学に入った頃には全紙版の現像をやることになりましたがガキだったボクにも用具にも技術的にもかなりのギャップがあるように感じました。レンズをエル・ニッコールに交換してテーブルの上で引伸ばし機のヘッドを180度反転させてフロアに投射しないと全紙の大きさになりません。35ミリフィルムに極小の傷も許されませんが父はフィルム用ルーペで念入りに確認していましたがお気に入りに傷が見つかった時には魔法を使って見せるからみてろと言って鼻の油をフィルムに塗るのでした。これ効き目あるんですよ。デジタル技術に浴した現在から見ると昔はなんという手間と金をかけたものでしょうね。暗室のニオイが懐かしく思い出されます。

この引伸ばし機は数年前に実家の町内に月一度現れる資源回収車に乗って姿を消しました。カメラとクルマには凝りに凝った父ですがリタイヤ後は有り余る時間を趣味に費やすかと思われましたが何にもしない人になってしまいました。忙しい人ほど多くの時間を所有しますがヒマな人間は実は時間をあまり持たないようです。彼も80歳になって残り時間はエンプティ状態ですが病気ひとつしないで病院の世話には一度もなっていません。先日孫娘の結婚式でデジカメで花嫁を写している父を見て時代は変わったのだと妙に実感するのでした。でもやっぱりニコンでした。イーストマン・コダックのカラーフィルム「コダクローム」が年内で製造を終えます。

f:id:Qjiro:20200321121938p:plain